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短文文化のこの時代に、感じたこと、考えたことを徒然なるままに。

【君の名は。】日本アニメの美味しいところどり。新海誠の作品歴に革命を起こした映画 ※ネタバレ有 【感想】

ついに観てきました、『君の名は。』。公開当初からSNS上であまりにも話題がもちきりで、はてなブックマークでも連日物語やヒットの考察がホットエントリー入りしていたから、気になりつづけていました。

何よりの決め手はストーリーへの賞賛が多かったこと。大体の新海作品を観てきたけど、主人公の男の子がウジウジなんにもせずに感傷に浸っているうちに、特に展開もなく映画は終了。やるせないニュアンスを味わう趣向の作品がほとんどだった。というか全部?笑

それが今回は「あの新海が伏線を張った」だの「脱童貞」だの皮肉を込めて騒がれている訳だから(笑)こりゃあ観るしかないな、と。ということで感想(※一部ネタバレ有り)です!

ループものとボールミーツガールという王道

最後まで観終わって、純粋にストーリーを楽しむことができる作品だと感じた。ストーリーもとってもわかりやすくて、何も考えず、感じ取ろうとせず、ただ思考停止して美しいストーリーと差し出されるストーリーを楽しんでいれば、ほぼ全てが理解できる、遊園地のアトラクションのように楽しめる純粋なエンターテイメント作品だった。

なによりループものなのがたまらない。僕は問答無用にループものが好きだ。あといわゆるセカイ系とか言われる男女の恋愛と世界の終わりが絡み合っているようなストーリーも大好物で、そりゃあもう『君の名は。』も面白いと感じるに決まっているっていう。

時をこえて誰かに会いに行ったり、時をこえて誰かを救おうとする系のアニメは、日本アニメ界において、幹並み好評化で人気作品も多い。

Steins;Gate』『魔法少女まどか☆マギカ』『涼宮ハルヒの憂鬱』『時をかける少女』『ひぐらしのなく頃に』などなどだ。これらの作品は全部観ていて僕もとっても好き。

再会とハッピーエンド

そして今回何より驚きなのが新海誠作品初?なんと再会でハッピーエンドを迎える点。今までは目の前までは接近できても、結局男女は出会えずに終わって、切なさと現実に引き戻される感覚だけが残るスタイルだった。それがある意味新海節であり、持ち味でもあったのに今回はまさかのハッピーエンド。

というか「君の名は。」は、あのエンディングありきでつくった作品なんじゃないか、とエンディングを観た瞬間に確信した。まだお互いのことも知らない(忘れている)、出会うはずのない二人の出会いを描くために、作品の全てが存在しているのではないかと思わされるほどだ。

震災との関連性などが示唆されているけど、あくまでメインは男女の再会であって、天災に対するメッセージ性は一装置にすぎない。と言っても、忘却というテーマでもってかつて好きだった人を忘れることと、天災の悲劇を忘れることが同時に描かれており、物語に多面的かつ重層的な広がりを生んでいる。

とにかくあのハッピーエンドで良かったと思ったし、ディズニー作品のような安心感があった。その中でも日本アニメらしいユーモアセンスだったり、新海節炸裂のヲタクアニメ的要素がうまいことつめ込まれていて、とってもバランスのいい作品だと感じた。そして、新海さんが眠くならない脚本とリズム感を映画で実現していることに感動。

挿入歌の活用

作中では歌入りの挿入歌が何曲も各シーンに合わせて流される。僕はこのMADっぽい演出が大好きで、それもまた嬉しかった。MADが純粋に好きで、アニメを観終わったら必ずMADを漁る癖があるくらいだからたまらない。

アニメの中で色んな挿入歌が流れる作品としては、PAWORKSの『花咲くいろは』や『ハチミツとクローバー』が好きで、そういうアニメどんどんつくってほしー!と思っていたから嬉しい限りだ。

こぼれ話ですが、ハチクロはいろんな邦楽が使われていて、花いろは、nano.RIPEっていうバンドの曲が使われているんだけど、このnano.RIPEがいい感じなので、ぜひ聴いてみてくだされ。

RADWIMPSはアニメ主題歌とかやるの初めてだと思うんだけど、とてもハマっていた。音楽ありきで成り立つようなシーンもあって。映画のために曲がつくられているようでもあり、PVから広げて映画をつくったようでもあり、見事な相互作用を生んでいた。

RADWIMPSがサントラやるって聞いたとき、彼らは演奏力が高くて伴奏がいい感じだから、BGMいい感じなんだろうなーと思っていたけど、やっぱりよかった!そして、珍しくピアノをフル活用している。

ってか最初、RADWIMPS新海誠って臭すぎだろ、こってりしすぎてキモくなるんじゃね?とか思っていたけど、両者とも経験の末にか厨二病感は薄れ、各々の職人性を発揮してプロの仕事に徹していた。

相変わらず美しい映像

職人といえばそう、言うまでもなく映像は美しかったです。今回の鑑賞環境が豊洲ららぽーとの一番でかいスクリーンだった上に前の方しか空いてなかったので、超近くて観にくいんじゃないかと思っていた。けど、幸い動きも少なかったので、見にくくはなくて、むしろスクリーンのでかさと近さが良くはたらいて美しい限りでした。

魅せることに特化した映像であって、非現実性を指摘するのはナンセンス。新海さんはあくまで観ていてきもちのいい映像を追求している。美しい映像つくりのために、太陽から差す光を二つ描いちゃったりするのが彼だ。

複雑な気持ちだったのは最も美しく描かれていた彗星の隕石落下が、人殺し隕石であったことだ。でもこれも意外とリアルで、現実で僕等が美しいと思うものは、実は悲しいものだったり、命を奪うものだったりするものであることも度々ある。

夜に夜景が綺麗なのは、残業しているサラリーマンの賜物であったりするし、流れ星は星の終わり、隕石の落下だ。戦争でも、兵器の火が美しく見える時があったりしたんだろうなあ。悲しいことに。機動戦士ガンダム SEEDでの核もそういえば、美しかったなあ。

話がそれましたが、青空、夜景、田舎の風景、雑多なビルに至るまで全てが美しくリアルに描かれていた。

人物描写

そして、今回新海誠作品として革命が起きている。キャラクターデザインとキャラの表情の動きだ。秒速5センチメートル前後のこけし感あふれるキャラクターから一転、実に表情豊かでジブリ的な人物描写に変化した。

それもそのはず、今回はスタッフが豪華すぎる。キャラクターデザインは、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の『田中将賀』さん。作画監督ジブリで『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』の作画監督を務めてきた『安藤雅司』さん。こりゃあ悪くなるはずがない。

というか個人的には細田守作品っぽいキャラクター像だな、と思ったのだけれど、意外と細田守作品御用達の『貞本義行』さんは絡んでいなかった。

主人公が今までのもやし男子から自信ありげなリア充感あふれる男子になったけど、普通に好感度もてるキャラクターだったな。そして、神木くんの声の甘さとオカマ演技の可愛さ。神木くんファンの女子はキュンキュンしっぱなしだったろうなー!

個人的に同級生の藤井 司くんが高校生時代からホモ臭くて、クール・プライド高い系男子だけど、大学生時代の描写ではいい年の重ね方をしていて好みでした。そしえt,絶対瀧と司がえっちいことする同人誌が発売されるだろうと確信。

総評

素直に楽しい映画でした。100点満点やべーー!!!とまではいかないけど、確実に80点90点を叩き出すような優等生的作品だと思う。

個人的に好きだったのは、組紐がめぐり合わせのモチーフとなっていて、自分自身も三葉が使っていた糸を編む器具でおばあちゃんに教えてもらいながら糸を編んだ経験があるから感慨深かったな。編み紐綺麗なんだよなあ。糸の比喩は中島みゆきの『糸』も思い出したな。僕はおばあちゃんっ子だから、おばあちゃんとのシーンが多いのもよかった。

うん、僕の好きな要素がたくさん詰まった作品でした。高校生が主人子の作品も好きだからたまらないな、と。笑

君の名は。』のことを思い出していると、色んなアニメで観たシーンや要素をたくさん思い出す。そんなちらし寿司みたいな作品でした。全くの新しさはないけれど、作画の美しさも、キャラクターも声優も、音楽も、全てをまとめると、あくまでシンプルにスマートに料理している点で良作でありそれこそがオリジナリティだったなって。ナイス監督!

映画の感想なのに、他の作品の話ばかりで全然感想を書いていないことに気づいて驚愕しているけど、更に脱線して最後に新海誠が2年前につくった、Z会のCMを紹介して終わります。

Z会 CM

このCMは、『君の名は。』と共通点が多くて。m都会に住む男の子と田舎に住む女の子が対比されて描かれている。そして、お互いに相手のことを知らなくて、途中で実はすれ違ったりしながら、最後には偶然の出会いを果たす。

ちょうどこのCMが出たころが『君の名は。』の制作開始時期と重なる気がするので、原点ないし、実験作でもあるんだろうな。このCMのテーマが好きだったから、映画でさらに大風呂敷を広げて演ってくれてうれしい。ちなみにこのCMも『田中将賀』さんがキャラクターデザインを務めています。

主題歌がSupercellの2ndで歌っていたnagi(やなぎなぎ)なのもさいこー。この曲のメロディーはアイルランド民謡のLondonderry Airを引用していて、民謡の方を偶然後から知ったから、はじめクリかと思って調べたら引用でした(笑)

おしまい

ということで、映像化されたらまた家で観ようと思う作品だった。何より大量のMADがニコニコに投下されるのが楽しみで楽しみで。笑その日を楽しみにすごそう。ラッドの曲はもちろんなんだけど、この映画にぴったりな曲を探のも楽しそう。ということで、最後まで読んでくれた方がもしいたならありがとうございました。

新海誠監督作品 君の名は。 公式ビジュアルガイド小説 君の名は。 (角川文庫)君の名は。 Another Side:Earthbound (角川スニーカー文庫)君の名は。(通常盤)

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