true harmony

短文文化のこの時代に、感じたこと、考えたことを徒然なるままに。

【僕たちは世界を変えることはできない】 今確かに笑顔が生まれたこと、それ以上も以下もない。【感想】

 

タイトルが、銀杏BOYZのドキュメンタリーと同じで気になっていた作品。原作者は、銀杏のタイトルから借用したそう。

正直観る前は、抵抗があって。なんというのだろうか、漂うキラキラ感が壁になっていた。俳優もみんなイケメン俳優だし、お涙頂戴なんじゃないかと思っていた。

でも、実際に観るとボランティアをする人の葛藤がとてもリアルに描かれているなって思った。

 実際に作中では、HPが炎上して自分たちのしている事が、偽善者と言われて叩かれたりして、自分自身が自信を持てなくなったりする。

(偽善者って言葉は、人を無条件で否定するマジックワードとして便利に使われすぎていると思う。)

しかも、カンボジアのために頑張っているのに、自分は失恋の鬱憤ばらしに1万8000円でデリヘル嬢を呼んでしまう。そんな時に飛びこんでくる、子どもたちの写真。

情けなくなって、主人公コータはデリヘル嬢に「ただ膝の上で寝かしてください!」という特殊オプションを発動。名シーンだと思う。
(原作者の母は、そのことを書いていたのがショックで泣いたらしい。)

 どこまでがドキュメンタリーで、どこまでが映画なのか!

現地でのシーンは、役者さんのリアクションが凄くリアルだった。実は、役者は現地でガイドからどんな説明を受けるかは、現地に行くまで知らなかったという。

出演しているガイドさんは、原作者もお世話になったガイドさんらしく、涙ながらに父について語るシーンは演技じゃなく素だと思う。

出演者の中でも向井理の演技は圧倒的なリアリティーがあった。彼自身のカンボジアへの思い入れが、そうさせていたのだと思う。嘘のない演技って気持ちがいいのだと、そう思った。

歌われる曲が、ブルーハーツの青空なのもぴったりな選曲で、銀杏BOYZの表題曲が挿入歌で流れたのも嬉しかった。映されるカンボジアの青空は、綺麗だったなあ。

 目の前で笑顔が生まれたということ。

映画自体への批判というより、描かれている大学生像への批判レビューが多かった。たしかに彼らがお金を集める手段は、クラブイベントだし、はじめた動機は退屈な日々を変えたかったから。俗で利己的だ。

でも、きっかけってなんでも良いのだと思う。やっていることが本質的かどうかは、批判する理由にはならないのだと思う。はじめは、利己的な動機だったけど、実際に現地に足を運んで、ただの題材だったカンボジアが自分ごとになっていく。

葉田: 郵便局でたまたま見たパンフレットがカンボジアだったというだけで、それが日本だったら日本で活動してましたね。いつも「何となく」と言ってます。ただ、“誰か”が悲しんでるだけじゃ人は動かないと僕は思っていて、その誰かが知っている“あの人”になれば動くのかなと。縁があって現地に行ったことで、カンボジアは僕にとって“誰か”じゃなくて“あの人”になったんです。
www.cinemacafe.net

 

こいつはお金持ちの恵まれた奴って批判もある。でも、不幸な人にしか何かをする権利はないのだろうか。それは現地の人を極端にかわいそうな存在として、下に見ている証拠ではないだろうか。

ずかずかと自己中に入っていく行為なら汚いと思う。でも彼らはちゃんと葛藤していた。

なにより目の前で誰かが笑ったこと、自分が誰かを笑わせることを通して喜べたこと、その事実はこの世に新しく生まれている。だから、その事実だけは間違いがないのだ。今目の前で笑顔が生まれたことそのものを素晴らしいと思っていいんじゃないか。

 自分ができることを1つずつ

別に海外に行けってわけじゃない。何かをしなきゃいけないわけではない。日常を生きる中で、少しでも目の前の人を幸せにできること、自分が幸せになれることを、自分のできる範囲の中で1つずつしていけばいい。もうその瞬間に、世界は少し変わっているのだと思う。

 紹介

良レビューをしているエントリーがあったので、ご紹介。

bookandwrite.hatenablog.com

 

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