『南場智子 / 不格好経営』を読んで
不格好経営はとにかく元気をもらえる本。
描き下ろし
この本は全て書き下ろしだ。一般的な経営者などのビジネス書というのは、自分で言葉を選んで文字を綴っているわけではない。 数度のヒアリングを通して、その情報を元に編集者が文字に起こすのが一般的な著名人の本だ。
それに対してこの本は、南場さんご自身が言葉を綴っている。嘘では無いだろう。文章はものすごく人間味があって、時にたくましく、時に幼く、そしてとにかく親近感があって読んでいて楽しい。
不格好がかっこいい
本のタイトルは不格好経営。文字通り、格好良くない経営という意味。 だけど、不格好であることがこんなにも格好良いなんて!と僕は感じた。
生々しくて、人間らしくて、すごいところはすごいけど、ダサいところはとことんダサくて、それを全て包括してかっこよかった。 交通事故に合わないように家から出ないようにしたのに、洗濯物を取り込む際に張り切って、階段から落ちるなど、南場さんの元気で少しドジなところが人間らしい。
胸を張って語る成功の法則が綴られているわけじゃ無いし、失敗に関する細かい究明の結果と具体的解決策が書かれているわけじゃない。
失敗の話がメインだけど、まるで部活動の思い出話みたいに、全部笑い飛ばしている感じが心地いい。
ハウツー本でも自己啓発でもなく、純粋なDeNAという会社のこれまでの人生(法人生?笑)が綴られているのがこの本。
人生を全力で生きる
人生を全力で生きること。それは誰もがしたいことだけど、実践するのはすごく難しい。だけど南場さんは間違いなく人生を全力で生きている。
MBA時代に遊びほうけたことも、創業期に30分睡眠で過ごした時も、社長を退任し、夫の看病に徹した時も。 その姿がとにかくかっこいい。飾ってない所がかっこいい。
とにかく元気をもらえる本
この本を読むととにかく元気をもらった。何かのプロジェクトに立ち向かう時は、たまに辛さも伴うけど、この本のことを思い出すと、頑張ろうという気持ちになる。
こんな人達が何年か前に東京で事業をして、物語を築いていたんだなって。そして今でも色んな所でこんな風に奮闘している人たちがいるんだなって。カッコイイ社会人は本当にかっこいいと学生の身分ながら感じた。
印象的な部分の引用
- ビジネス書に対する思い
私はビジネス書をほとんど読まない。こうやって成功しました。と秘訣を語る本や話はすべて結果論に聞こえる。まったく同じことをして失敗する人がごまんといるという現実をどう説明してくれるのか。
失敗談こそ教訓があるのではないかということで、失敗談をたくさん書いたそうな。最初に慎重派の方を会社に口説いた際に、「社長失格」というベンチャー企業を倒産させてしまった方の経験談の本をプレゼントしたらしい。
慎重派の人に渡すチョイスとしては、これからベンチャー企業に入ることを誘っているのに、逆効果だし、南場さん本人も自分でツッコミを入れているが、なぜかそれで熱が入ったというエピソードも面白かった。 人がどういうキッカケに影響されるかは、予想し得ないものだ。
- 守安さんからエウヌジーモコのニール・ヤング氏に大事な時期に有休を取らないようにとお願いしたメール文章
Dear Neil, My leadership style work most hard. So you should do the same. Isao
これは面白すぎて笑ってしまった。 だけど、自分の言いたいことをド直球で遠慮無く伝えている爽快感。 もちろんこのあとフォローは必至だったらしいけど、互いの文化観の違いをしっかりすりあわせられるいい機会になったとか。
私たち日本人は自分のことは自分でやりなさい。人に迷惑をかけないようにしなさい、と言われて育つ。でもそんなことは全部かなぐち捨てて生きることに固執し、悪あがきをし、いろんな人に支えられて踏ん張った夫の子の2年間は、迷惑をかけない生き方よりも人間としてはるかにしっくりくるように感じることがある。
第一線で活躍し続けた夫の闘病についての一言。 人に頼ることはかっこわるいことじゃないし、むしろカッコイイと思う。
- 優秀な学生とは?
よく学生から、優等な人の特徴や、性格上の共通点は何かと問われる。そんなことを訊いてどうするのだろうかと思うが、実際、この質問は考えだすと面白い。 最初は個性がバラバラなので、共通点は考えられない。などと答えていた。実際ひとつのパターンは見いだしにくい。ただ、自分が接したすごい人たちを思い浮かべると、なんとなく「素直だけど頑固」「頑固だけど素直」ということは共通しているように感じる。
やるべきと言われたことは素直に行動に移す。自分のこだわりは簡単にはまげない。なるほど。そうだな、と感じた。